この道に至るきっかけと、これまでの経緯をお聞かせください。
父は内科医でした。自宅の1階で診療をしていたものですから、医師か歯科医師になると、子どもの頃から考えていたのです。なかで歯科医師を選んだのは、幼い頃からの機械好きが影響したのかもしれません。医科に比べて歯科のほうが、機械を扱うことが多いようなイメージを持っていたものですから、より自分を生かせるのではないかと考えたわけなのです。父を見ていたものですから、医科の診療に関してはなんとなくのイメージはありましたが、実際に大学へ進んでみると、歯科は正直わからないことだらけでした(笑)。でも、逆を言えばそれが幸いしたのかもしれません。知らないことが多いからこそ、「面白い」と感じたんですよね。
大学を卒業後、実家のほうに戻り、徳島大学の矯正学教室に籍を置きました。歯科の中でも矯正は特殊な分野であり、大学では基本を習うのみで、深いところまで学ぶことはありません。ここでも充分に知らないからこそ興味をおぼえ、また、一般の歯医者さんに出来ないことを学べるのではないかと思い、この分野に身を置くこととなったのです。
徳島大学で診療を通して矯正の実際を学んだ私は、その後、静岡の歯科医院にお世話になることとなりました。そちらは一般歯科に加え、矯正治療もおこなっていた医院でした。矯正治療だけを専門とするのではなく、一般診療をここで経験出来たことで、より広い視野から歯科のことを学べたと思っています。
『いせ歯科クリニック』は、1996年に開院を迎え、この地(東急田園都市線・市が尾駅より徒歩11分)に場所を移したのが、今から9年前(2006年)のことになります。
一般歯科と矯正歯科が並行してあるのが、大きな特徴になりますか?
はい。ですので、矯正の相談に見えられ、虫歯や歯周病の治療をおこなうケースもありますし、小さな頃から予防のために見えていて、矯正の時期についてご相談を受けることもあります。端的に言えば、統合的な歯科診療を目指すというところでしょうか。矯正治療をおこなうには、子どもの成長のパターン等も知識として踏まえている必要がありますし、咬み合わせについての知識も必要です。より全般的な知識を踏まえた上で、その方にとって必要な治療を選択していくのです。
初めていらっしゃった患者さんについては、まずご希望のところを治すことから始めていきます。その際には、その治療がどのくらいの期間で終わるのか、また、どのような選択肢が考えられるのかといったことをご説明し、患者さんのご希望を踏まえて計画を立ていきます。
咬み合わせの重要性についてご説明ください。
咬み合わせをきちんと作る、ないし、構築しないことには、虫歯や歯周病等の治療が終わったとしても、機能的に回復しきれてないケースが出てきます。これは矯正治療の分野に限らず、入れ歯をお作りする際にも考慮に入れておかなければならないことです。最近では、歯の成長が非常によろしい半面、あごの成長がそれに追いつかず、結果として咬み合わせが悪くなっている子どもが多く見られます。小さなお子さんであれば、早く気づいてあげて、あごの成長をうながす矯正器具で補正してあげれるのですが、成長の止まった大人はそうはいきません。ではどうするか。完全に良い状態にすることは難しいのですが、歯の合わさるポイント、ポイントを調整してあげることで、咬み合わせを改善することは可能です。
咬み合わせを適正なものにすることでどういった効果が得られるでしょうか。まず、お口の中に入れた技工物の保ちが良くなり、虫歯等に罹るリスクが軽減できます。また、あごが本来の位置に戻ることで、肩こりや頭痛といった不定愁訴的な身体的不調の改善が見られることもあるのです。
歯を治療する技術は、歯科医師ならば皆が持っていることでしょう。しかし、咬み合わせの知識と、それを調整する技術を併せ持つ先生はまだまだ少ないというのが現状です。レントゲンを見てもどこも悪くない。不定愁訴がなかなか治まらない。そうした悩みをお持ちの方は、咬み合わせに特化した先生を見つけていただくことが解決策となるやもしれません。
歯周病が身体全体におよぼす影響についてお話ください。
今や、日本人が歯を失う原因の第一が歯周病となっています。最近では、この歯周病の菌がお口の中の毛細血管から身体の中への入り、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす要因となり、また、流産の一因となる可能性が指摘されています。ここで1つ留意していただきたいのが、女性は妊娠中、身体の抵抗力が落ちるものですから、普段に増して歯周病菌が増える傾向にあるということです。それを防ぐためには、やはりきちんきちんとお口の中をお掃除することが大切です。まったくゼロにすることは難しいとしても、歯周病菌を増やさず管理することが、ご自分のため、ひいては、産まれてくる赤ちゃんのためになるのです。お聞きになったことがあると思いますが、虫歯や歯周病という病気は感染症です。つまり、産まれたばかりのお子さんの口の中には、虫歯菌や歯周病菌は存在しません。それが、ご両親、あるいは、おじいちゃんやおばあちゃんが食べ物を与える段階で移っていくことになります。その感染を完全に防ぐことは非常に難しく、また、神経質になる必要はないでしょう。大事なことは、感染する菌の量を如何に減らすかということ。そのためにも、家族全体でお口の中を清潔に保っていく必要があるのです。
歯科治療の進歩の度合いは著しいものなのでしょうね?
治療の技術や使う機材の性能は、昔に比すれば格段に向上しています。たとえば麻酔1つをとってみてもそう。一昔前であれば「痛い」のが当たり前だったものが、今ではほとんど痛みを感じることはなくなってきています。痛点というものがあり、そこに当たることで痛みを感じるわけですが、麻酔の針自体が非常に細くなり、また、切れ味も上がったことで、痛みを感じる前に効果を上げることが出来るようになっているのです。歯科の治療について、いまだに、「痛い」「恐い」といったイメージをお持ちの方は少なくないことでしょう。しかし、そのイメージは、現代の歯科に1度いらしていただければ、ずいぶんと変わるだろうと思っています。
向上するということで言えば、最近は入れ歯の材質そのものが昔とは良くなってきています。ノンクラスプと言いまして、金具の付いてない入れ歯があります。女性の方は、「金具が気になって…」という方が多いのですが、そうした方にとって、金具の有無は大きなメリットとなります。
それから、差し歯の材質をみても、強度的にも審美的にも優れたものが出てきています。これらの多くは保険診療の適用外となりますが、コスト的に考えても、以前より割安感のあるものが多くなってきています。患者さんのニーズに応じて、それに応え得るものを随時、導入していきたいですね。
最後に地域の皆様へメッセージをお願いします。
当院は毎土曜日、そして日曜日も隔週で診察をおこなっています。「平日は忙しくて来れない」という方に、便利にご利用いただければと思っています。「何かおかしい」「何か気になる」 その時点で、いらしてみてください。早く来ていただければ、それだけ多くの選択肢が用意出来ることにもなりますし、歯を保たせることにもつながってくるのです。その可能性を考えれば、定期検診に訪れていただくのが最も良い選択と言えるでしょう。半年おき、1年おきに来院していただけますと、変化をとらえやすいということにもなりますから。
開院以来、20年近くずっと半年おきに定期検診にお越しになっている方がいらっしゃいます。1回1回の内容としては、患者さんからすると、そんなに大したことをされているという実感はお持ちになってないでしょう。しかし、それを10年、20年と続けることによって、何もしてないのと比べて大きな差があることは間違いのないことなのです。
※上記記事は2015.8に取材したものです。
情報時間の経過による変化などがございます事をご了承ください。
いせ歯科クリニック 伊勢 広隆 院長 HIROTAKA ISE
- 出身地: 徳島県
- 趣味・特技: スポーツ全般、車
- 好きな本・愛読書: CAR GRAPHIC
- 好きな映画: アクション
- 好きな音楽・アーティスト: サザンオールスターズ、松任谷由実
- 好きな言葉・座右の銘: 一期一会
- 好きな場所・観光地: 箱根