谷 彰文 院長(花と緑のこころのクリニック)のインタビュー

花と緑のこころのクリニック 谷 彰文 院長

花と緑のこころのクリニック 谷 彰文 院長 AKIFUMI TANI

久留米大学医学部を卒業後、救急医療や外科診療を経て、精神科を専門に。「たまプラーザ駅」そばに開業。

この職業を志したきっかけ、現在に至る経緯などをお聞かせください。

私が医師になろうと考えたのは、中学、高校時代をともに過ごした友人を亡くした経験が大きかったですね。「人助けをしたい」という思いを胸に久留米大学医学部に学び、卒業後も大学に残って麻酔科に入局。救命センター勤務、整形外科診療において経験を重ねた後、在宅医療、ホスピス、検死などに携わり、さまざまな立場で「人の死」に直面してきました。もちろん病気や不慮の事故によって亡くなる方を見送ることもありましたが、中には自ら命を絶つことを選択した方もいらっしゃいました。そうした環境のなかで私は、「人の心の問題」に向き合いたい、ご家族など遺された方の心のケアをすることができたら、と考えるようになったんです。精神科に転向した後は、私自身も苦悩した経験をもつ家庭環境や人間関係の改善に重点をおき、投薬に頼らない精神科医療の実現に尽力してきました。

『花と緑のこころのクリニック』についてご紹介ください。

当院は東急線「たまプラーザ駅」の南口から歩いて1分ほど、駅前の通りに面した医療ビルの4階にあり、心療内科・精神科を専門に診療を行っています。夫婦や家族間の問題、子供の不登校、引きこもりなどを引き起こす要因の多くは、人が「生まれ育った家庭環境」によるところが大きいもの。そのため、たとえ投薬治療を行ったとしても、症状の改善は一時的なもので、やがてまた同じことが繰り返されてしまうんですよね。その一例が、アルコールや買い物への依存症、DV、摂食障害などです。私は長きにわたり精神科医療に携わるなかで、家族の関係性・家庭環境に起因する精神症状に、薬物治療は効果的ではないと思い至りました。そして、患者さんの家庭環境や家族関係に着目して関係性を見直し、問題解決へと導いていくことこそが病気を根本的に治すことであり、人間らしい幸せな生活を送っていただくためには不可欠だと考えるのです。当院ではこのような考えのもと、たとえ時間はかかっても、心理的なアプローチをベースに問題の解決を目指します。家族・女性・子供のためのクリニックという立場で、さまざまな問題に対応していきたいと思っています。

診療コンセプトについて教えてください。

何となく体調が悪いからと心療内科などを受診し、処方された薬を飲みながら生活されている方もいらっしゃるでしょう。一方で、心療内科や精神科を掲げるクリニックの多くが、薬物に頼った治療を行っていることも事実です。ただし、今あらわれている症状の原因が人間関係や生まれ育った家庭環境にある場合、薬物加療だけでは根本的な問題解決にはなりません。一部にはカウンセリングによって患者さんの精神的な負担軽減に取り組んでいるクリニックも存在しますが、患者さんのお話を聞くだけでは問題解決へと導くことはできないでしょう。もしも家族間に何らかのトラブルが生じている場合、当院では親・子供・夫婦など、それぞれに対して心理面接を行い、問題の本質を探り・見極めます。そして、心理カウンセラーとも連携をはかりながら、具体的な治療構造を作成して行くのです。こうした「構造枠」をつくる作業には精神科医としての高度なスキルが要求されますが、治療を進めるうえでは非常に重要なプロセスです。当事者である本人から、誰にも言えなかった思い・悩みをお話いただくことで、ご一緒に問題解決への道を進んで行きたいと思います。

先生が取り組まれている「家族間の問題」についてお話ください。

親子や夫婦など家族の関係は、本来は見返りを期待しない「無償の愛」が「条件つきの愛」であるときに崩れていくように思います。当事者は病的な人間関係であるとか、共依存であることに全く気づいていない状態が続き、一方が耐え切れずに暴力を振るったり不登校になったりして、ようやく問題が表面化するというケースが多いですね。たとえば私が長年研究を続ける「一卵性母娘(いちらんせいおやこ)」。いつでも一緒に行動する母と娘は、一見すると非常に仲のよい親子関係に見えますが、決して健康な精神状態ではありません。娘は母の顔色を見ては機嫌を取ろうとし、良い子でいよう、良い成績を取ろう、と頑張っています。「何もできない自分は愛されない」と思い込み、頑張り続ける娘は、母親のマインドコントロール下にあると言ってもいいでしょう。外面的には母親に愛されているように見える彼女も、心の内側では愛情に飢えているのです。反対に母親は、自分の孤独や満たされない寂しさを埋めようと娘に対して過干渉になり、束縛してしまいます。そして、そんな自分もかつて同じ経験をしていたということに気がついていないのです。一卵性母娘の問題は、女の子に限らず、男のお子さんにも起こり得ること。母親からの過干渉に耐えられなくなったとき、暴力・引きこもり・摂食障害など明らかな問題となってあらわれるのです。
一方で家族の問題では、「治療の順番」も大きなポイントになります。たとえば自分の子供が「発達障害」であると診断された場合。ひと昔前は発達障害と診断されることもなく、たとえ病気を抱えていたとしても「個性的な子供」としてのびのび育っていったものです。ところが現在では「発達障害」は完治を望めない「病気」として認知され、診断を受けた保護者、とくにお母さんの精神的ダメージは相当なものでしょう。このようなケースでは、お子さんが健全に養育されることを第一に考えて、保護者の方の心のケアからスタートすることもあります。こうした適切な判断ができることも精神科医に求められるスキルであり、問題解決に向けて欠かせないプロセスなのです。

サイトをご覧になる皆様にメッセージをお願いします。

私たちのように心の問題を根本から解決する内面的な治療には、何よりもご本人の意思であり同意が必要です。ご自分やご家族のどなたかに、現状から一方踏み出す勇気をもっていただかなくてはなりません。私は検死官という立場で、自らの手で命を絶ってしまった方を目にしてきました。ですからぜひ、職場の人間関係や家族関係に悩みを抱える方がいらっしゃるなら、お力になりたいと考えているのです。もちろん、自分の心の問題はできるだけ伏せたい、今あらわれている不快な症状を薬で何とかできればそれでいい、と考える方もいらっしゃるはずです。対人関係のトラブルに悩んでいる方でも、自分自身を客観的に捉え、修復できる方もいらっしゃるでしょう。でももしも、誰にも相談できず、ひとりで頑張っていらっしゃるなら、ギリギリの状態まで我慢することなく、ぜひクリニックにお越しいただきたいと思います。
※上記記事は2015.06に取材したものです。
情報時間の経過による変化などがございます事をご了承ください。

花と緑のこころのクリニック 谷 彰文 院長

花と緑のこころのクリニック谷 彰文 院長 AKIFUMI TANI

花と緑のこころのクリニック 谷 彰文 院長 AKIFUMI TANI

  • 出身地: 熊本県
  • 趣味・特技: スポーツ全般
  • 好きな本・愛読書: 心理関係の本
  • 好きな映画: ヒューマンドラマ
  • 好きなアーティスト: 50~70年代のロックとジャズ
  • 好きな言葉・座右の銘: 別れがあれば、出会いもある
  • 好きな場所・観光地: 自然のあるところ

INFORMATION