眼科医を志されたきっかけと、開業までの経緯について教えてください。
中高を通して美術部に所属していたこともあり、中学3年生までは文系とくに美術系を進路に考えていました。そんな私の進路を一変させたのが、肺炎で入院した経験です。当時15歳だったのでギリギリ小児科に入院することになりましたが、お世話になった先生に遅い初恋をしまして、退院後は医師の仕事に憧れを持ち、医学部に進むために理系に転向しました。高校生になってから進路を大幅に切り替えることはなかなか大変ですが、その時期に決めてよかったですね。以降は医学部受験に向けてがむしゃらに勉強しました。卒業後はまず大学の呼吸器内科に進み研修しました。関連病院に出向した際は、入院患者さんを20-30人担当しながら外来と救急をこなしていました。重症患者さんが多く、帰宅後もいつ呼び出されるかわからない状況が多々ありましたので、その際はいつも私服を着て就寝していました。夜間救急患者さんも多く、気管内挿管、救急蘇生といった救急処置も多かったです。
そのように多忙な毎日を過ごしながら年齢を重ね、女性医師としてできるだけ長く社会貢献が出来る場について検討するようになりました。眼科に転科しましたのは、学生時代に眼底写真を見て、微細で複雑な構造に驚き、興味を持ったことがきっかけです。また内科医の経験から、糖尿病をはじめとする生活習慣病などの全身疾患によって眼底出血やむくみをおこすことを目にして、眼底疾患の研究や治療をしたいと思うようになったことが理由でした。
大学病院の眼科で糖尿病網膜症の研究を行いながら、網膜硝子体専門外来に携わってきましたが、開業の5年前からは都内の眼科専門クリニックで手術をはじめとする様々な治療を行ってきました。今回たまプラーザで開業させていただくことになり、今後はこれまでの経験を活かして本地区のホームドクターとして、みなさまの目の健康に貢献させていただきたい所存です。
診療方針を教えてください。
常に患者さんを中心として、最大限の技術や心遣いで患者さんを支えていきます。その方が何にお困りで、何をお望みであるかを丁寧に伺い、それぞれの方に最適な「オーダーメイドの治療」をご提供することが大事だと思っています。成人の患者さんには生活習慣病(糖尿病、高血圧、高脂血症など)に由来する眼底出血や加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)でお悩みの方が増えてきています。適切な検査で状況を確認し、モニターを使って患者さんにご自身のご病状につき十分に説明をした上で、最適な治療を選択いたします。
加齢黄斑変性は、網膜の中心部である黄斑部に異常な血管が出現し、出血やむくみによって視力が次第に低下してしまう病気です。加齢、紫外線、喫煙、高脂肪食などが原因であると言われており、近年増加してきて問題になっています。この病気にたいしては、抗VEGF薬(新生血管の成長を抑制する薬)を微量目に注射する治療法が2008年以降認可され、病気の進行を抑制したり、病状の改善を期待できるようになりました。注射には極細の針を使用しますので、ほとんどの方は痛みを訴えられません。発症するのは一般的に60歳以降ですが、それ以前にも発症する方はいらっしゃいます。早期に発見し、早期に治療を開始できることが重要となりますので、ものを見る中心部がゆがむ、視力が下がってきたなどの自覚症状がある場合は早めに検査にいらしてください。
当院では注射以外にもレーザーを使った治療を行っております。眼底の病気のうち、糖尿病網膜症や網膜静脈閉寒症、中心性漿液性脈絡網膜症、網膜剥離、網膜裂孔などに行うことがあります。一部の緑内障の方にも行います。この際は局所麻酔の点眼薬をさし、目の表面にレーザー用のコンタクトレンズを装着して施術します。病状によって異なりますが、通常1回数十分で終了します。
目の健康を守る秘訣について教えてください。
先程の加齢黄斑変性は紫外線や喫煙、高脂肪食と関係がありますので、それらを避けていただき、バランスの良い食事や規則正しい生活を心がけることは病気予防となります。生活習慣病に伴う眼底疾患でも同様に食生活や適度な運動に気をつけていただくことが必要ですね。お子さんにつきましては、近年近視発症の若年齢化が指摘されています。近視発症には遺伝的要素が強く影響しますが、環境因子も関与しており、日照時間(外遊びの時間)との関連も指摘されています。ある程度外で身体を動かし、近業(ゲームや本など)の時間を多くしすぎないことも必要かと思います。
診察で心がけていることと、地域のみなさまへのメッセージをお願いします。
眼科を受診される患者さんはお子さんからご高齢の方まで幅広いですが、中にはとても緊張されている方もいらっしゃいます。そこでスタッフ一同でなるべくリラックスして受診していただける、温かい雰囲気づくりを大切にしています。目の病気については、眼科全般に広く対応しておりますが、特に眼底の疾患について専門的に診療しています。また内科との医療連携に力を入れており、よりグローバルな視点での医療を提供させていただきたいと考えています。目に異変を感じましたら何でもご相談下さい 。
※上記記事は2015.8に取材したものです。
情報時間の経過による変化などがございます事をご了承ください。
たまプラーザ南口眼科 酒田 久美院長 KUMI SAKATA
- 出身地: 東京都
- 趣味・特技: 映画鑑賞
- 好きな映画: ホラー映画
- 好きな音楽: ロック
- 好きな言葉・座右の銘: 誠のほかに道なし(出身校の校訓)
- 好きな場所: ビアガーデン、居酒屋さん。